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Table4. Mean angles of head,hip,knee and ankle extension at the crestof the reach.

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くとみられる。また、年齢とともに、最高点で十分なリーチングと身体の伸展を引き出すために、逆の腕を下方へ振り下ろす動作(Arm opposition)ができるようになることがわかる。
幼児の跳運動では、下肢の動作は系統発生的に獲得されており早期から発達しているが、跳躍に運動量を加えるような腕の動作の完成は遅れてなされるもので、この上肢を使う動作は習得的なスキルと考えることができる。したがって、年少の初期には腕の動作はまとまらず、ためらいがみられる。)といわれているが、本研究の結果は、幼児期の腕の動作の習熟過程を良く説明している。

5. 滞空局面での動作

垂直跳では、踏切後身体を十分に伸展させ、目標に向かって腕を伸ばして跳躍高を獲得することが求められる。そのためには、滞空局面での動作の習熟が課題のひとつとなる。
表4は、滞空局面において最高点に達した時点での腰、膝、足関節の伸展角度、および頭部の身体後方への伸展角度(背屈の角度)を計測し、各年齢の平均値を比較したものである。腰、膝、足関節の伸展角度は、いずれも経年的に増大しており、年齢が増すにつれて空中で身体が十分に伸展されるようになることを示している。頭部の背屈の角度は、2歳では小さい(18.1°)が、年齢とともに増大し、6〜8歳(57〜58°)では十分に後方へ屈曲されていることがわかる。こうした頭部の背屈の増大は、空中での身体の伸展の増大と頭上の目標への十分な注視を可能にすると考えられるので、幼児のJump and reachの動作にみられる発達的特徴のひとつといえる。
要約
2歳から8歳の男児124名を対象に、頭上の目標物へのリーチングを課題にして、最大努力での垂直跳(Jump and reach)を実験的に行わせ、年齢にともなう跳動作の変容を調べた結果、以下のような発達的な特徴が明らかになった。
1. 踏切動作中の下肢の各関節の動作範囲は、年齢とともに漸増した。これは、主として最大かがみ込み時における腰、膝関節の屈曲角度の経年的増大によるものであった。
2. Jump and reachにおける腕の動作は、6つのタイプに類型化され、年齢とともにリーチングのみられない未熟なタイプ(Type.E)から、上方への有効な振り込みタイプ(Type−A)へと変容することが明らかになった。また、腕のリーチング動作の反作用として、逆の腕を下方へ振り下ろす動作(Arm opposition)が、年齢とともに増加した。
3. 滞空局面において最高点に達した時点での腰、膝、足関節の伸展角度、および、頭部の背屈角度は、年齢とともに増大した。頭部の背屈の漸増は、年齢にともなう空中での身体の伸展動作や目標への注視を引き出していると考えられた。
これらの結果から、幼児のJump and reachにおける跳動作は、2歳頃の未熟なパターンから、年齢とともに洗練化し、7・8歳になればかなりの習熟位相に達していることが明らかになった。

文献

1) Halverson,L.E.:The significance of motor development.In:The significance of the young child's motor development,NAEYC

 

 

 

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